バイクの本 〜 「ぼくのキラキラ星―オートバイと仲間達と」
2012-03-04




仲間と一緒にバイクを楽しむ様子を、車歴と共に描く

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堀ひろ子さんの本を読んでいて、何故か、この人を思い出した。
なので、何となく取り上げておく。

中沖さんというと、古きよき時代のRiders Club誌のコラム「鉄と心とふれあいと」がまっ先に思い出されるが、その他にも、バイク関連では多方面でご活躍されていた。ずいぶんご高齢になるまで、バイクを楽しんでいらしたように思うが、何年か前に亡くなったと記憶している。

件のコラム「鉄と心と」は、主に旧車を扱ったもので、古いバイクを直して乗る人や、ずっと乗り続けている人などを取材して、機体のなれそめや、オーナーの人柄などを、暖かい視線で紹介する記事だった。写真もきれいだった・・。(まとめて一冊化すると、ほっこり読める、いい感じのムックになると思うのだが・・。)

件のコラムだけでなく、雑誌など、あちこちに書いていて、著作もたくさんある。しかし、ほとんどがグランプリ出版の絶版で、今、探しても「アホか」っちゅう高値が多くて残念だ。

本書は、著者が若かりし頃、仲間と一緒にバイクを楽しんだ様子を、時系列に書き綴ったものだ。当時の、いくぶん粗野だが、シンプルかつピュアにバイクに接する様子が、楽しげに書かれている。

なにせ、「R1」といっても、三億円事件の方なのだ。(笑)

当時は、日本が工業化して、豊かになって行く「青春時代」そのもので、当時の世相を知る上でも、優良な資料と言えると思う。

著者の本職は、クルマの塗装業を生業とする職人さんで、戦後世代の「たたき上げ」だ。当時の厳しい世相を肌で知っている世代であり、それをこなした方ならではの、卓見と包容力は筆致にも表れている。物事をわしづかみせんと手を伸ばしつつも、ゆっくりと包み込むように取り出そうとする温かみは、筆者の人生経験の厚さの反映でもある。

キビシイ困難を、平気でこなした「余裕&図太さ」が何となく感じられる辺りが、堀ひろ子さんと似ていたのかもしれない。ちょっと、こじつけっぽいが。

昭和は、シンプルでピュアで、ダイレクトだった。
それを懐かしむ人が、老若男女問わず今もいる、ということは、我々の幸せは、単純で純粋で直接的な何か(またはそれを許す余裕)なのだけれども、それが今は失われている、ということの表れではなかろうか。
単なる私のノスタルジー、とも思えないのだが。


Amazonはこちら
ぼったくり古本が幾つか出てますが。
定価は1200円でした。
図書館の隅に見つけたときにでもご覧ください。
ぼくのキラキラ星―オートバイと仲間達と禺画像]

ちなみに、近くの図書館にはコレがあって、読んでみましたが面白かったです。
塗装工時代の、四輪がらみのお話。
アバルトは低速トルクが薄くて、届けるのに苦労した・・・とか。
(当時の、新車・ホンモノのアバルト乗ったなんて・・・いいなあ!。)
見て盗め、の師弟制度の時代。それを実感できるのも価値かと思います。
力道山のロールスロイス―くるま職人想い出の記 (1982年)禺画像]


堀ひろ子さんの著書もそうだが、こういう良書が埋もれたままなのは、実によろしくない。電子書籍なら、在庫管理リスクも相当減らせるだろうし、出版側の負荷も相当減らせるのではないか。
出版界の生業は、物事を伝えることだ。いつでも買ってもらえる環境を整えるというのは、優先度が高い課題だと思うのだが。

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