読書ログ 〜 「 独自性の発見 」
2012-05-19




独自性という観点から、差別化を図るマーケティング戦略を論じる

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表題から、独自性という概念がどう発見(創造)され、どのように発展(変化)してきたのか、のような、認識論または哲学的な内容を期待したのだが。まるで違った。どう消費者の関心をそそるか?という意味でのマーケティングの、ハウツーを並べた本だった。

原題は、「Differentiate or Die」 差別化か死か。(差別化しないと死んじゃう?) 独自性でもって、自社または製品のポジショニング(市場での立ち位置の確保)を行う方法について、実例を挙げつつ、つらつらと論じている。

たったこれだけのお題で、300ページからなる本なので、いろいろとカテコライズ(分類分け)などに気を使ってくれているのだが、目移りが激しいだけで単調というか底が浅くて、繰り返しも多い。何か実質的なことを伝えようとする本ではなく、ざっと見回して面白がる娯楽として捉える方がいいように思う。

とにかく実例だけは豊富で、これをやるにはこういうやり方や考え方があって、こういう帰結でうまく行った・・・といろいろと挙げてくれる。でもその後に、同じ方法論でも失敗する例はあって、例えばあれやこれや・・・と来て、自分で論旨をひっくり返してしまう。要するに、原理原則としての妥当性を論じたものではないので、即、応用が利く何かを掴みたい人には向かないだろう。また、背景まで詳しく説明してくれるわけでもなく、どちらかというと知識のご開陳のニュアンスで「チラ見せ」だけなので、深く掘り下げて何かをつかみたい、探求タイプの人にも向かない。

人々が認識するのは「差」であって、企業のアイデンティティも、製品の価値もそこに宿る、だから「差」の取り方に工夫と注意を凝らすべきだ、という著者の意見には一理ある。宣伝に近い部類のマーケター(ブランディングとか)を職業にする人が、理論武装(言い訳?)用の知識のために読むにはいいかもしれない。

一般の人がそんな知識を役立てる場は稀だろうから、娯楽程度にしかならないだろう。


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