読書ログ 「流域地図」の作り方
2014-07-26




ずいぶん前だが、ホムペに、バイクでツーリングのとき、路面ばっかり見ていないで、「地形」を見るように走ると一味違うよ、のようなことを 書いた。

この本の題名を見たとき、地形の見方として、流域というのも面白い切り口かな、と思ったので。試しに読んでみた。
梅雨時で、降水関係の天災が多い季節だったこともある。

内容は、大きく二つに分かれる。

初めは、「流域」という地形の見方についてだ。

といっても、内容としては知ってる通りで、流域とは、一つの河川(系)と、そこに雨を流し込む斜面(地面)で構成されるエリアを言う。山の尾根と谷(川)の、断面で言うと凹型の部分を、地形の要素とする考え方だ。

水の流れは、流域に沿って作られる。例えば、上流で降ったゲリラ豪雨が、下流で鉄砲水を起こしたりするから、治水(土木)を考えたとき、流域は、地形の見方として必須となる。

さらに著者は、古今東西、人間が、川の水の流れを基本に暮らしを営んできた事実を鑑み、それを支える意味でも、自然環境を、流域を単位に把握するのは非常に大切だ、と主張している。

次は、流域にかかわる自然保護運動の説明だ。

主に、著者が住んでいるエリア、横浜市周辺のようだが、その地域の、流域を基本とした自然保護運動、NPOとか市民運動などだが、その紹介がされている。頁の分量としては、こちらの方が遥かに多くて、大半を占めている。

そのお話を総括すると、どうも、90年代のバブル崩壊以降、土地の開発の勢いが止まったが故に、自然保護運動がやりやすくなった。世の中の勢いが自然保護に傾いて(環境省や国土省でも話がしやすくなって)、あちこちで同様の運動が立ち上がったので、それは良かった。しかし一方で、流域、治水、という考えに基づかないやり方も目立っており、そこはよくない。そんな論が展開されている。

特に、槍玉に挙がっているのは「里山」で、人間が勝手に作った区分けである行政区に基づいた「オラが山を守る」という思想は、主に人間の側の都合を反映したもので、自然保護の思想としてはそぐわない、と手厳しい。

まあ、山は大概持ち主が決まっていて、「保全」という言い方もピタリと決まるし、お役所の縄張り意識ともよく合致するから、実際に動く分にはやりやすいのは想像がつく。(今のままの枠組みで行ける。)対して、川は個人としての持ち主が居ないし、「水に流す」という言われ方通りに、水は流れていってしまう。それを多元的に管理しましょうなどといってもピンと来ないし、縦割り星人のお役所達に、横に連携することを強いるから、容易に動かないだろうことは想像がつく。(新しい枠組みが必要=困難。)確かに、自然保護利権としては、分が悪かろう。

とはいえ、著者の言い方は少し寛容性に欠けていて、私の論がわからないのは悪いヤツ的な言い回しも散見されるから、読んでいて、少々鼻白み気味となる。(私は辟易した。)

以上、題名通りの内容は前半の少しだけで、後は、自分がやっていることの説明。
まあ、近頃の新書と大目に見ても、内容としては、ちょっと薄いと感じる。

ツーリングでの地形の読み方として、新しい知識が得られたわけでもなかったし。
残念。


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