読書ログ 日本人と中国人
2016-05-15




「なぜ、あの国とまともに付き合えないのか」という刺激的な副題からすると、近頃流行の中国をけなす本の類かと勘違いしそうだが。そうではない。ニクソン、角さんの時代の、日中国交正常化を機に書かれた、古い本だ。

売らんかなの後付のようなこの副題は、本の内容を伝えていない。
「あの国とまともに付き合ってこれなかった由来」程度が妥当かと思う。

日本にとって、「圧倒的な外国」といえば、黒船の前までは専ら中国で、誰が何といおうと、その影響下に長く置かれてきた。

中国との付き合いは長い。だが、お話し合いがまともにできたことはほとんど無い。この本の当時も、侮蔑していたはずの中国に、いきなり尻尾を振るという豹変を、勝手にしていた。

なぜ、そういうことが起きるのか。その原因として、日本が古来から培ってきた、ものの考え方の根本の辺りが関わっているだろうと、著者は、その系譜を、芋づる式に掘り返して見せる。

多少?の誤差を承知で、まるっと丸めてみると、

○ 文化的な象徴の元に感情的に隷属することで安心する気質。
(裏返すと、それに従わない者を感情的に糾弾することが許される、ことにもなる。)

○ しかし実利(カネ勘定)は別の原理で動いていたりするので、
 その「頂の象徴」を挿げ替えるのには、あまり抵抗がないこと。
(象徴は、権威さえあれば機能するので、適当な理屈が新しく流布した程度で、誰も気付かないうちに変わっていたりする。)

○ 交渉相手(特に外国)のイメージを自分で勝手に作り上げ、
  実物に投影してしまうこと。つまり、リアリティがないこと。
(その状態で、ものを考えたり言ったりするので、相手からは迷惑だったり、理解不能だったりで、「不思議な国・日本」となったりする。結局、お話にはならないのだが、それをまた感情的に相手のせいにしたりするので、収拾がつかない。)

といった所だろうか。

その根拠として、著者は、古い国内外の文献などを縦横に引用してくれるのだが、漢文はもとより、古文も読めないドロップアウト日本人である私には、その是非が分かろうはずも無く。

多分、正統派の歴史解釈からは相当離れている、だけではなく、むしろ挑発する語気で書かれているらしき雰囲気は読み取れた。

上記の箇条書きを見ても、確かに自分もそういう所あるよなあ、と納得できる面は多かったし、「だから日本は外から見ると理解されない」(理解されない原因は日本側にある)という意見は、一考に値するように思われた。

全く、この著者の博識には驚かされるし、ユダヤ的なモノサシという、日本人には珍しい武器を使いこなす手腕は大したものだと思うのだが、悪意に解釈してしまうと、上記にもある「感情的な隷属先」をユダヤに挿げ替えた日本人、とも言えるかもしれないので。両刃の剣かなとも思った。


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