◆ (単行本) スヌーピーがいたアメリカ: 『ピーナッツ』で読みとく現代史
2024-03-09


PEANUTSというコミックは、チャーリー・ブラウンの優柔不断というオブラートに包みつつ、時々の時事問題に深く関わってきた。時にそれは、単純な問題提起に留まらず、ある種の穏健な主導性をもって、社会レベルでの議論を先導してきた。

本書は、そのインタラクションを、宗教、人種、戦争、環境、ジェンダーといった社会問題のカテゴリ毎に、かつ時系列に沿って章立てに整理し、詳述している。

二次大戦後、アメリカがこれまで取り組んできた社会問題を、経緯を含めておさらいする、といった趣だ。今のアメリカに再度当てはめて再考するも良し、今後の日本の在り方を考える際の材料とするにも適している。

個人的には、PEANUTSがシュルツにもたらしていた膨大な金額的な利益や、ある意味そのために、コミック界で差別要因とすべく、あらゆる新規な取り組みや工夫の数々などに、従来書にない新鮮味を感じた。TV特番などで日本で伝えられる情報では、シュルツというと、欲と無縁な仙人的なイメージが多いように思うのだが、実態は、かなり違ったようだ。

ただ、シュルツがある種の誠実さと良心でもって、この仕事に取り組んでいたことは確かだ。そして今、そういった類の仕事は、次第に世の中から消えつつある。

世の中的にも、人種、宗教、戦争といった、ややもするとオワコン扱いされてきたものが突如、大きく復活し、我々を再度悩ませているご時世でもある。

そういった時世にあって、本書の読書経験は、少々特別な物のように、私には感じられた。


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スヌーピーがいたアメリカ: 『ピーナッツ』で読みとく現代史 単行本 〓 2023/7/20

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