数学の歴史を、読み物としてまとめた本
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例えば、一年の日数を表す365が、連続する3つの自然数の平方の和であり、
365 = 10*10 + 11*11 + 12*12
かつ、その次の2つの自然数の平方の和でもある
365 = 13*13 + 14*14
という事実に、何かの意図を感じ取ったり、真理を見た、と感動したりすることは、ありうることかもしれない。(うるう年の立場が無いが。)
この本は、数学の歴史、言い換えると、上のような、数が織り成す諸相に、人が何を感じ、考えてきたか、その変遷をまとめた本だ。
基本的に歴史の本なので、昔の偉かった人(数学の進歩に貢献した人)を順繰りに紹介する作りだ。怪しいオジサンの白黒の肖像画が、次々に繰り出されるイメージ。個人的に、ガキの頃の、音楽室の後ろの壁を思い出した。(音楽家の肖像画が並んでいた。何故か、皆おっかない顔で、こっちを睨んでるんだよね・・。)
数学とは何か。実は、専門家の間でも、はっきりとは定義されていないとか。
端的な言い方として、これが「発見」なのか「発明」なのか?それすら決まっていない、と。(自然法則として予め備わっているものを、整理し記述しただけのものなのか、理屈が通るように体系だって考え出された、ただの構想なのか、わかってない、ということ。)
始まりは、秩序だったもの、全く確実なもの、のイメージからスタートした数学だが、度重なる拡張と発見を重ね(非ユークリッドとか、確率とか)、次第にそこから剥がれたり隠れたりして行き、認識の根本的な所が曖昧になって行く。(数学的に妥当性を説明をされても、腑に落ちないことが多くなる。)その危うさが、次第に深まっていった所で、本書は終わる。(現代に達する。)
ただ順繰りに説明するだけではなく、数学が持つ様々なアスペクトの間を、自在に飛び跳ねてみせる。その様は痛快でもある。何せ、論理体系とは言うものの、幾ばくかは「信ずれば/従えばなり」の世界である。プロット次第では、哲学と魔術の間に挟まってるようにも見えてくる。
我々は、数字で何かを読み取ったり、伝えたりもできる、そういう時代に棲んでいる。(偏差値や株価なんかに一喜一憂したりする。たとえ、その正体をはっきりわかっていなくとも。) 我々が、そういった、数学的な有象無象の概念がもたらす「形」に囲まれ、常に影響されていることは、意識していいだろう。そう思った。
それに、たぶん、神様ってのは、細部に宿るようなチンケなものではないはずで、数字の裏なんかに隠れているものでもない。だから、そこに意味を見るのは人間の側の勝手であって、それはきっと、数学者でも変わらないのだろう。
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神は数学者か?: 万能な数学について禺画像]
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