バイクの本 〜 「オートバイのある風景 堀ひろ子」
2012-02-19


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パリダカと、ラベルダを続けて書いたので。連想ゲームでここに来ました。

この人の著作を読んだのは、初めてだ。
無論、お店の方にも行ったことがない。

昔々、私がまだバイク雑誌を眺めていた頃。この人は、既に表舞台からは降りていた。女性ライダーはもう珍しくなくて、レーサーは二代目三代目に移っていたし、漫画家やお色気系、雑誌のマスコットまで横並びしていた。この人は、先駆者として、たまに名前が挙がる程度だったような気がする。

レースや世界規模のツーリング(砂漠を含む)で広く活躍していて、ラベルダにも乗っていた女性。その程度の知識しかなかった。

地元の図書館を当たったところ、何冊か蔵書があったので読んでみた。

今回のこの本は、1982年刊。既に30年前の本なので、ヤケてるわシミてるわで、えらい状態だったが。この人の「人となり」は、何となくわかったような気がした。

今やいろいろ言われすぎて、伝説じみてしまった感もあるが、きっと、相当に「自由な人」だ。

当然のように、わが道を進む。
そのために、何かを背負うのは厭わない。

その意味で、以前取り上げた この本 の著者に、何となく似ているようだ。
(ファンの皆様には怒らないでほしいのだが・・。)

この共通項。
確かに、あの時代の「自由」は、こんな匂いがしていた・・・。

戻して。
この本は、著者が長年、バイクに親しんできたさまざまな断片について、書き綴ったものをまとめた本だ。レースやトライアルなどの競技や(ニーラーまで!)、ツーリングや昔乗ったバイクの印象、バイクをめぐる文化や規制に対する意見や見解(エッセイ)、バイクがらみの小説っぽい短編などが収められている。

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いろいろと、懐かしいような、既視感がある本だった。

当時の物書きの、手で書いた文章。
 (推敲を想定した、キーボードで打った文章ではない。)

わざとらしくて優しい、アナログ写真。
 (プロが機材を準備して、時間や天気を待って、構図を狙って撮って、丁寧に焼いた、手間がかかった写真。)

そこでつらつら綴られる、当時の日常や、常識なんかが。

(昔、RidersClub誌で連載していた、中沖さんの「鉄と心と・・」を何故か思い出した。)

70年代。
一般に、バイクといえば、暴走族か、イージーライダー辺りのイメージだったろうか。
そこに女性だ。しかも美人。

「オンナなんか」に並ばれた途端、プライドがメンツに成り下がる。そんな、「ペラいオトコ」は今も多いが、当時はもっと普通だった。
そりゃあタフだったろう。
(なんて同情なんかすると、ご本人には、鼻で笑われかねないが。)

その証拠に、この人は、いくら優しい題材を書いても、緊迫感というか、芯の強さが、どうしても出るようだ。

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堂々としたラベルダが体現していた、あの当時に特別だった何かは、今はもう陳腐化していて、その辺に埋もれてしまった。

逆に、今の「常識」の中には、当時から見れば、相当に異様なものも含むだろう。

いろいろ便利になったはずなのに、妙にせせこましかったり、不自由だったり。

もし今も、この人が居たら。
オバサンになった堀ひろこは、何を言っただろうか。

と、21世紀の私は感じた。
うっすらと、原発由来の、セシウムなんかを浴びながら。

今、振り返る視点で読むと、昔の、辛くて楽しい矛盾や不条理が、よく見える。

それを、
  知っていた人は、思い出すために
  知らない人は、学ぶために
残しておいて欲しい類の本なんだが。


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