読書ログ 「メイド イン ジャパン 驕りの代償」
2013-04-20




会社の人に借りて読んだ。

昨今の家電業界の落ち込みと、浮いたり沈んだりの自動車業界を比較などしながら、日本の製造業の、来し方行く末を論じた本だ。総じて、日本経済が沈んでこっち、経営層の保身優先の姿勢ががなっとらん、という昨今よくある論調に終始している。

著者は、もと朝日新聞の記者さんだそうで、もっぱら、事象を外から見る視点でもって、取材や証言など、他者由来の情報を編み上げて、記事を為している。

著者のキャリアのせいだろうか、そういった、組織を中から見る視点、人間が、組織の一員になったときにどういう考えをするものなのか、わが身に挿げ替えて、深く考える思考というのは、あまり無いように感じられた。たぶんそれは、組織の一員として組み敷かれ続けた、長くて苦い経験が根底にないと、ムリなのだろうとは思うのだが。

論旨の方も、ちぐはぐに感じる所がある。例えば、国内工場をぶった切って海外調達に切り替えてコストダウンを図ること(カネ優先)と、従業員のやる気を開放して生産性を上げること(ヒト優先)は、実質は逆のことだと思うが、両方とも賞賛されている。

それに、どうも著者には、自分が知らないことがある、という前提が欠けているように感じられた。その場合、記事は、つなぎ合わせ、埋め合わせに終始して、のっぺりとしてしまう。本来、そこを埋めるのは著者の経験や、昇華した卓見であるべきで、読者は、それをこそ期待していると思うのだが。残念ながら、そこはぽっかり欠落している。

その辺の経済記事のおまとめ、長いブログ程度の読み応えだと思う。
何となく、憂さは晴れるのかもしれないが。実効性のある解決策は、つかめないだろう。

ただ、最新の時事情報としては価値がある。読むなら早い方がいいだろう。時事モノは足が早い。時期を外すと、途端に古臭くて読めなくなる。

最後に。
本書では、日産のゴーン改革が、見習うべき手本として、賞賛されているが。

クルマのユーザーとして、読者が本当に憂うべきは、日産が儲かるようになったことと、日産車が良くなったかどうかは、全く別のことだ、という事の方だと思うが。

どうだろうか。


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