読書ログ 「失われた20年」と日本経済―構造的原因と再生への原動力の解明
2013-04-27




失われた10年が20年に渡らんとする昨今、経済研究も、従来より長期間を扱う必要が生じた、と前書きにある。その通りに、経済低迷の理由を、最新情報(と言っても2012年3月刊なので、1年前だが)も入れて、経済学的な知見をまとめた本である。

経済学の本にありがちなのだが、判断の方向がどちらを向いているのか、よくわからない。

例えば、健全な経済、と言った場合、何をもって健全と言っているのか。
経済学的な理論に合致しているかどうかを基準に置いている場合、理論から乖離した理由はこれで、その原因はここにあるから、脱却の方策はこれだ、という論旨になる。結果、理屈の筋が通ったか、を論じているだけに過ぎず、人々が豊かに、幸せに暮らせるようになるのかはあまり考慮されない、空論になってしまう。

広範、かつ多方面に解析が及ぶほど、論旨は入り組むので、検証も、妥当性の判断も難しくなる。この罠にはまると、平等かつ真摯に論理を積み上げた真面目な本なのか、始めから何らかの結論ありきで、それに合致する論理を集めて組み合わせただけのオレオレ本なのか、判断に苦しむ結果となる。残念なことに、専門分野の学者さんの場合、それを狙ってわざと内容を複雑化させることも、また多い。(難しい/分からない=スゴい、という価値観。)

おツムの弱いワタクシ程度のレベルでは、理論としては合っているのかを追うこと自体が面倒で、論旨をざっと追うだけになってしまった。その程度の読み込みではあるのだが、やはり、結論ありきの方法論で書かれた本ではないかと感じられた。各章の章末に、結論をまとめる試みをされているが、それをざっと眺めただけでも、真新しい内容はほとんどない。大体は、普段感じているのと同じような事か、やるべき所には投資をして、業態を最新型にupdateして行けば、も少し回るんじゃないのか的な予定調和に見えた。

とはいえ、ここだけにしかない、きらっと光る参考点のようなものも、多くはないが散在しているので。一見の価値はあろうかと思うのだが。その割にはちょっとお高いし、読むのも疲れる本だった。


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