バイクの上半分 15
2013-11-03


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ラインの話の続きである。

レースを見る人は知っていると思うが、スピードを争うサーキットでは、コーナーを大回りして、通過スピードを上げるばかりではない。「抜き際の突っ込みでインを取る」ラインを良く見かける。

直線部(ブレーキングポイント)をより奥に取れるから、進入の瞬間は前に出られる。しかし、曲がっている最中は、きつい極率が長くなるので、遅くなる。いわば、わざわざコースをハードブレーキときついコーナーの連続として走るわけだから、リスクは上がる。例えば、進入スピードの見積りを誤った時の、リカバリも難しくなる。(コースアウトしてしまう:公道ではリスクがかなり高い。)

そして、トータルのタイムが本当に速いのかは、場合に依る。緩いコーナーの連続と、きつい、またはテクニカルな複合コーナーが連なる場合では、前後のコーナーのつなげ方が変わってくる。「一番いいライン」は、バイクの車種によっても変わるだろう。

レースでも、競り合って、インの取り合いをした結果、タイムが落ちることはよくある。その前方で、大回りラインを悠々と走るライダーが逃げてしまったりも。やはり、「インを取る」ラインは、言わば、稼ぎのために数字(順位:ポイント)が欲しいライダーが、リスク承知で仕方なく、脱出スピードを犠牲にして突っ込みを優先し、コーナーを速く回りたいライバルの「前をふさぐ」ラインなのだ。

本書には、一般ライダーが、サーキットで、レーシングラインと大回りラインのタイムを比較した所、ほとんどのライダーが、大回りラインの方が若干速かった、とある。一般ライダーには、あまり役に立たないラインなのだろう。特に公道では、メリットは薄そうだ。

復習だが、大回りラインは、コーナーでのマージンを大きく取れる。バイクにも人間にも負担が小さい、つまり、人間の方が疲れていたり、バイクの調子が悪かったりしても、安全の確保が容易だ。より公道向けとも言えるが、ただ、道巾を一杯に使うので、しくじった時、センターライン越えたりすると、ダメージが大きいので注意が要る。

つまり、公道を走る基本として、「どれだけ曲率を大きく取れるかを探りつつ走る癖がついている」ことが必要、というわけだが、これには、潜在意識の行動プログラムを使うしかない。初めはゆっくり、ラインを意識し、次の動作を意識し、その動作の連なりを、また意識する。そうやって一歩一歩、試行錯誤しつつ、身体レベルに落とし込んで行く。

ベテランは、これがかなりの度合いで癖になっていて、「勝手に身体が動く」感じになっているわけだが、逆に、そうなると、もう意識からはコントロールできない。モニタできるだけになる。

そのための、最大の早道(コツ)は、著者いわく、「遠くを見ることだ」と。

実際、バイクの動きは、意識によるコントロールが追いつかないスピードだ。著者は、例として、だだっ広い駐車場で、コップの下に敷くようなコースター(丸い紙)を路面に置いて、コーナリングしながら踏む、という遊びを挙げている。これが、意外と皆、できないものなのだそうだ。コースターを意識して、凝視してしまうことで、かえってできなくなってしまうと。(凝視せずに、視界の端に置く程度がいいらしい。)

凝視によって、意識が、潜在意識の行動プロに干渉するのが混乱の元、ということらしい。

確かに、初心者が、気になるもの(はらんで来る対向車とか)を凝視しすぎて、かえって寄って行ったりすることはよくある。前輪のすぐ前の路面を凝視して、それに逐一対処しようと身構えるのは、素人が陥りがちな「無理な相談」だ、とベテランは知っている。


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