読書ログ 「リスボン 坂と花の路地を抜けて」
2013-12-28




いつぞや取り上げた 旅の本 で思い出した。
行きたいのに、行けていない所。

その一つが、ポルトガルだ。
ちょいと寂れた、端っこのヨーロッパ。

一度、興隆を極めた後に、滑り落ちた。
だからこそ、知っている真実。
そんな匂い。

その匂いがありながら、平和に暮らせている。

珍しいと思うのだ。
大概は、滑り落ちたままにうらびれて、荒れ果てたり、
見る影もなくなってしまったり。
すっかり失われ、わずかに残る古い書物の断片に、
その影を追うのがせいぜいと、そんなだったりする。

金銭的には、豊かではない。
しかし、生活「感」は、豊かに見える。

本当に大切なのは、預金のケタや、クルマやスマホの画面の大きさ
にあるのではなく、うまそうに焦げているイワシとワインと、
いつも変わらずに泣いている、ポルトガルギターなのかも知れない。

この、丘の斜面から海を見下ろす、すり鉢のような構造の、
古くて美しくてゆっくりした町は、そう思わせる「劇場」のような
佇まいを持っている。

著者は、長く海外に住む脚本家の女性だそうで、今は南ポルトガルに住んでいる。本書は、その著者が、半ば慣れ親しんだリスボンの風景(風俗)を、写真つきで紹介した本だ。

著者による写真はよく撮れていて、技巧もさることながら、「好きで撮りました感」がよく出ていて、見ていて楽しい。文章も、何せ本当にリスボンを歩きに歩いて書いているので、足裏の痛みとトラクションをじんじんと感じるようなリアリティがある。(笑)

私は普段から歩くのが好きなのだが、リスボンに行ったら、日がな歩き回るだろうと予想している。

全く、本書には、この坂だらけの街を、歩き回ったような気分にさせてもらえた。

私がリスボンに行ける日が来るのかはわからないが、しばらくは本書で「行きたいけど行けない」心に溜飲を下げることとしよう。

そろ寒い季節である。
久しぶりに、 マドレデウス でも引っ張り出して、聞いてみようと思う。

(ちなみに、私はギターの研究を続けるうち、ポルトガルギターにはまって久しい。その何たるかを、いずれ書こうと思っているのだが。なかなか書けずにいる。誰も読みたくないだろうしね。笑)


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