バイクの上半分 21
2013-12-29


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「インテグレート」について、もう少し掘り下げてみる。

自己の境界を外側に膨張させた状態。
その「自己」の中に、(バイクを含む)道具が共に含まれて、有機的に機能している状態。
人車一体。

「人馬一体」状態の乗馬は、傍から見ていてもわかるし、危なげないどころか、心地よくさえ感じる。
それと同じことが、いろんな形で起きうる。
人間が、「乗せられている荷物」から、「系の構成要素」になった状態。

しかし、インテグレート状態というのは、実は、さほど安定なものではない。

長いブランクの後でバイクに乗ると(冬ごもりの後とか)、妙な違和感を感じることがある。何となく、まるで始めて乗るような、よそよそしい感じがするものだが、乗っているうちにすぐに慣れて(思い出して)、以前のように、自然に乗れるようになる。(インテグレートが起動するのに時間がかかる。)

インテグレートが「解かれる」場合もある。
例えば、長距離レースなどで事故が集中するポイントを解析すると、「休憩」と強い関連を持つ場合があるそうだ。休んで緊張が解かれると、インテグレートも切れるのだと。
(でかい事故は家の近くが多いの法則も、同じ原理かもしれない。)
そして、肉体的な疲れなども影響して、断絶の後、インテグレーションが起動するまでの、時間が延びる場合もある。
だから、大事な場面の前には、インテグレーションになるべく早く入るように、という意味で、少し早めに乗るなり走るなりしておくこと(ウオーミングアップ)も大切、なのだそうだ。

同様に、マシンのポジションのセッティングも、単なる快適性というだけでなく、より深くマシンと統合するために大切なファクターなので留意すべし、とある。

マシンとの同化は、その外側の、環境との影響も深める。
「予測というより予知に近い予感」などは、よく見られる例だと。
(といったことは、実は人間以外の動物でも見られることで、例えば、ひょいと立ち上がっただけなのに、散歩に行くことを察知して、犬が歓喜しだす例などが挙がっている。)

インテグレートは、「上達」とも密接に関係している。
練習を続けるうちに、細切れだった「潜在意識の動作プロ」が整合、調和して、一連の動作として一つになる瞬間があるのだが、外から見ると、「いきなりうまくなった」となる。
(逆に、練習しているのに上達しない「踊り場状態」は、この統合が上手くできていない場合があるので、少し視点を変えた練習が功を奏する場合があるとも。)

インテグレートは、「潜在意識の動作プログラム」で行われる。
潜在プロでしかできないものだし(現象)、潜在プロで行われるものをインテグレートと言うのだ(定義)。

インテグレートは、様々な効果がある。
単純に、身体能力やパフォーマンスが上がるという効果が顕著だが、「疲れない」という効果もあると。(「自動」なので、疲れないのだ。)
初めての道は、緊張のせいか疲れるし、長く感じるものだが、慣れるに従って「いつの間にか過ぎている」感じになるものだ。(二度目の道は短いの法則。)

反面、インテグレーションの深度が増す(やりすぎる?)につれ、潜在プロが前面に出て支配度を強め、意識の方が脇に追いやられる。一種のトランス状態、入眠前の意識混濁の状態と同じようになる場合がある。(返事もしない状態。)

耐久レースや、長距離トラックドライバーにはよく見られるそうだが(疲れないので便利)、バイクのスプリントレースでも、競り合いがない状態(トップをブッチ切りとか)では起こるそうだし、それ以外の、いろんなスポーツや、一定の動作の反復を伴う職業などでも見られると。

注意力は一点集中で、頭脳は(部分的に)明晰な状態を保っているのだが、怖いのは、これが解かれる瞬間が、いつ来るかわからないことだ。

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