読書ログ ふしぎなイギリス
2015-08-02




図書館の新刊コーナーで見かけて。どこかの書評で見たような・・・話題の本なのかな?と借りてみた。

毎日新聞の特派員として、イギリスにも短くない滞在暦を持つ著者が、自身の経験に照らして、イギリス文化の何たるかを、政治や経済のトピックを元にまとめている。

個人的には、イギリスって、よくわからない。

まず、自分では行ったことがない。

他人の言うことを思い出しても、古くは漱石から(英に滞在して神経衰弱になった)、新しくは個人的な友人(英を含む海外勤務経験が豊富)まで、イギリスを良く語る人は、ほとんど知らない。いわく、天気が悪い、メシがまずい、人が冷たい、とそんな下馬評が大概だ。

報道のような情報から見えるイギリス像も、いろいろと極端だ。下層の方、70年代の不景気の時の白人の若者のグレ具合は、今のサッカーファンの暴力性に受け継がれているようだ。上層の方も、サッチャー首相の巡航高度はかなりブッ飛んでいた。この間のリーマンショックでは、スコーンと落っこちたと思ったら、いつの間にか他より儲けて、一足早く、ちゃっかり復活しているあたり、上手いというか汚ないというか、なかなかのしぶとさだ。

趣味エリアでは、英車のバイクいえばトラだが、懐古趣味モデルはカブ並みの乗り易さだけが取り柄だったし、それ以外のモデルも、「トラっぽさ」というのは特に感じさせない、ただの今様のバイクのようだった。でも、リーマンショックの時に、英ポンドが半額近くまで落ちたのに一切値下げせず、つまり「実質的に倍に値上げ」でシレッと売り抜けて、キッチリ儲けを積み上げていたのは印象的だった。さすが大英帝国と。(笑)

一般的には、我が国では、文明開化の当時からこっち、先進国のお手本としての地位を保っているというか、トラウマを引きずっているような所はあるだろう。USAと共に、世界的な人種階級のトップとして君臨するアングロサクソンにやられちゃっている感情が抜けないようだ。

著者も、どちらかと言うと「向こう側」で、イギリスに比べて日本は・・・的な論調が、一本通っている様に私には読めた。

確かに、イギリスに限らず、人生の楽しみ方は西欧諸国に比べて未熟だなと、そこは同意なのだが。それ以外は、いろいろとまだら模様の読後感だった。

何となく、お役所的な杓子定規の強度ではピカイチな印象が強いイギリスだが、本書によると、肝心な所はいろいろといい加減で、問題の都度、悩んだり考えたりしながら何とかする、その時の基本的な考え方が日本とは根本的に違う。その辺が誤解されがちなので、ちゃんと理解して欲しい・・・という著者の意図は読み取れた。一見、保守性が強いイギリス文化が、実は変化し続けていることを、王室を軸に描く辺りは良く描けていた。

確かに、いつもちゃっかり「いい側」に居るという外交手腕や、話のブチ上げ方やカネの儲け方なんかは見習う余地があるなあとは感じたのだが。当のイギリスも全てがうまく行っているわけではないし、「そうかなあ・・」という点は少なくなく。それに、やっぱり大英帝国的というか、見下ろされている感じの目線を感じてしまうのは気になった。

同じ島国で、近隣諸国との仲が微妙で、単一民族のようだが実はそうではなく、他国から慕われているんだか嫌われているんだかよくわからず、イマイチ将来像を描けていなくて、自国人がテロを起こしたことがある・・・と、類似点も数、挙げられる一方で。やっぱり根本は全然違いますよとなると、実態はよくわからない日本とイギリスだから、一言でまとめると「ふしぎな国」と。つまり、題名も中身も、そんなことのように思えた。


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