死とは何か さて死んだのは誰なのか
2020-09-20



前回と同じ著者による、これも有名な本だと思う。
一緒に図書館に予約したのか、題名に惹かれたのか。

あちこちに書いた短文を寄せ集めたものだ。
同じモチーフを集めたものだが、寄せ集めだけに、話の筋に一貫性はない。
繰り返しが多くて、思索が深まることもない。

またその話か。
次はないのか。
次第に飽き飽きしてくる。

この本からわかるのは、著者は、死が哲学の最初でかつ最大の対象であり、それに始まる諸々の物事をずっと考えて続けていますよ、ということだけだ。

死とは何か。著者は最初に結論を言っている。無だと。
無とは、ないことだ。ないことを理解できるのか?とかそんな話だ。

つまるところ、著者の思考的ハビットの表層を繰り返し撫でるだけで、読者の思索の役に立つわけでもないし、疑問が氷解することも稀だろう。

それに、何となく、他人を見下す姿勢が香る。
私の考えがわからないの?(仕方ないわねえ。)
自分で考えることが大事なのよ。考えてる?

事程左様に、死に関する高尚な(?)思索なわけなのだが、実際に、著者に死期が近づき、死を身近に感じた時に、役に立ったのかは疑問だ。

死神というのは、自分の死神が、近くまで来た時に初めて、その本当の怖さがわかる。

他人の死神は怖くないし、遠くにいるうちもまた、怖くない。

この著書の思索は、まだ怖くなかった頃のものが多い。

それが始終変わらないということは、つまるところ、「考えることに逃げている」ようにも見える。
死に対しては、いかな著者とて、そうせざるを得なかった、ということかも知れない。

そんなこともあって、本書の論は、何となく、核心に近づけていない印象を、個人的には持った。
(というか、そもそもが、考え方の姿勢の方が論点で、死はその題材に過ぎない。)

表題からして、死期を悟った方が手に取る可能性がありそうだが。
お勧めしない。

死ぬことについて、あまり考えたことがない人や、死生観を明瞭にもたない人への刺激、または最初の一歩くらいには、なるかもしれない。

実態としては、この著者のマニア向けの副読本、といった所かと思う。


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死とは何か さて死んだのは誰なのか 池田晶子

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