バイクのロードレーシングライダー、ケニーロバーツのライディング論
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原著は"Techniques of Motorcycle Road Racing"。
和訳は1992年刊。定価¥2800。
私にとって、「キング」ケニーの名は、特別の響きを持つ。
今、当たり前になっているライディングのあれこれのうち、彼から始まった(編み出した)と言われるものも多い。
その真偽や良し悪しは置くとしても、彼が現れる前後で、レースの風景は、ガラッと変わった。それを肌で感じた世代にとって、やはり、彼の存在は大きい。
中年以上の皆様には、ご同意いただける方が少なくないのではなかろうか。
ケニーは、ロードレースでの「動バランス」を、はっきりと具現化した、初めてのライダーだと思う。
バイクは、努力や根性や運などで動いているのではなく、トラクションとイナーシャの動バランスで、倒れずに動いている。
その刻々と変化するバランスは「こうなっているんだよ」。
彼のライディングは、いつも自信満々で、ダイナミックで、スムーズで、速かった。
実はとんでもない高荷重の、どん詰まりの突端の上に居る、実に恐ろしい状態なのに。まるで何も無理をしていないかのように、平気な顔で通り過ぎて行く。
両輪を美しくバランスさせて。
私にとって、あのライディングのイメージは、今も時々、「理想」として想起される。
本書は、「キング」ケニー ロバーツが、ライディングに関するあれこれを述べた本である。
細かい乗り方論も多少はあるが、大体は、これまでどんな環境で、何を学んで来たか、という視点から、ライディングに関する緒論をまとめている。
どちらかというとメンタルな情報も多いので、やり方論としての具体的なテクニックを期待すると、間違う。
(そちらをお望みの方は、こちらの方がいいだろう
→
Kenny Roberts RIDE TO WIN )
一応、レースシーンでのあれこれを想定して書かれている本でもあるのだが、そういった内容なので、応用範囲は広く取れる。
無論、公道のロードライディングにも、いろいろと参考にできる。
時代が古いこともある。
下手をすると、今、我々が触れている公道用の機体の方が、彼が学んだレース用の機材より高性能な場合もありうるだろう。
「レーサーに乗る場面でないと役に立たない」と、むげには否定できないという意味で、やはり参考にできることは多いように思う。
個人的には、彼の物の考え方を垣間見ることができたのは、大変参考になった。
「自己の実力に対し、傲慢なまでに自信に溢れている」ことと、
「現実の前に、素のままで謙虚でいられる」ことは、
彼の中で、何の矛盾もなく両立している。
尊大で、素直。
これは、なかなか難しい。
だいたい周りを見回せば、偉くなると、真実でも不都合なら認めたがらなくなる例が多いし、素直に過ちを認めるのは、偉い俺のすることではない、と思い込んでるパターンも多いのではなかろうか。
しかしそれでは、安全に速くは走れないのだ。
それは多分、バイクだけではなく、あらゆることに共通する、本質なのだと思う。
そんな風に超然とした所が、彼が「キング」と呼ばれた所以かもしれない、とも思った。
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当然、古本です。山海堂ですから。
ケニー・ロバーツ ロードレーシングテクニック (SANKAIDO MOTOR BOOKS)禺画像]
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