'90sのバイクの本(3) ホンダNRヒストリー、他
2015-07-19




NRの市販車が出たのが1992年だそうだが、それを期にしたのだろう、2冊ばかりNRの本が立て続けに出ていたので借りてみた。

RC213V-S のようなものが出て、金額的にも、超フラッグシップ的な意味合いとしても、NRの存在が完全に抹消されようとしている今、それを振り返ってみることには、意味があるかもしれない。


禺画像] 1992年6月刊

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ホンダNRヒストリー―楕円ピストンにかける技術者たちの夢と情熱禺画像]

初めの一冊は、開発史を詳細に追ったもので、著者は富樫ヨーコになっているが、HONDAの開発陣へ取材した内容を並べているだけで、物語としての再構成はないようだ。淡々と、開発陣が何をやったか、何があったのかが、時系列に並んでいる。NRは、当時はいろいろと謎めいた存在だったので、その成立ちに興味がある向き(少なくなかったはず)には、「判明の喜び」をもたらしてくれる本かも知れない。


もう一冊は、市販車のNR750を詳細に紹介するムックである。

禺画像] 1992年8月刊

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HONDA NR―革新のロードスポーツバイク (PICTURE BOOK)禺画像]


2冊とも、一通り目を通したのだが。
私には、やっぱりわからなかった。

NRの目的だ。
これは、何のためにあったのか?。

開発には、必ず目的がある。
「何のために創る」というゴールが、必ず初めにあるはずなのだ。
いくら優秀な技術者とて、ゴールがなければ走りようがない。

NR、New Racerの略だそうだが、それは、HONDAがGPに返り咲く際に、会社としての特徴をよりあらたかに示すために、是非4サイクルで勝とうと、何故か、そういう話になったらしい。当時のGP500は2サイクル全盛で、そこで4サイクルで勝てれば、技術力の誇示としてより効率が良かろうと。そんな動機だったようだ。(誇示したい技術があるのかどうか、つまり、4サイクルで行けるのかの技術的な検討が、初めにあったわけではない、という所が、HONDAスピリットというか、プロXというか、竹槍精神というか・・・「夢」って言うのかな、世間的には。笑)

で、そうなった後で、さて、4サイクルで現行2サイクルと同じほどのパワーウエイトレシオを実現するにはどうしたもんですかねーと考えると、当時としては非常識な高回転を実現せねばならない。そのためには、吸入効率を飛躍的に高める必要があると。

要は、バルブの面積を増やしたいのだが、普通の筒状のシリンダーヘッドに、丸い吸排気バルブ(普通は4つ並んでいる)を、さらに増やすには無理がある。そこで、ピストンを楕円にすれば、バルブが8つくらいキレイに並ぶよね、と。NRのスタートというのは、そんなことだったようだ。

もし、ホントにそれだけの話なら、バルブの方を楕円にするとか、他にもアイデアはいろいろあったんじゃないかと思うし、よしんば楕円ピストンで行くにしても、エンジン工学的に、熱効率がボンジュールだから出力がトレビアンみたいな、もう少し技術的に突っ込んだ検討があってしかるべきなんじゃないかと思うのだが、まあとりあえず、HONDAでは、ピストンの方を楕円(正確には長円)にしようと、そういう話になったそうだ。


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